止まり続ける駅前

人が行き交う交差点。

誰かを待つ駅前。今日も私は誰かを待っている。

 

今日も相変わらず憂鬱だ。

意味もなくスマホを取り出して、SNSを見る。

どこかに行った投稿、綺麗な景色、意識高い系の投稿、メンヘラチックな言葉。

 

こんな投稿をして何が満たされるのだろうか。

こんな小さな画面の中で評価されても、実感はわかない。

そして私自身が本質的に満たされるわけではない。

たぶんみんなはわかってるんだ。

わかった上で毎日投稿したり、誰かの投稿を見たりする。

めんどくさいなと思ってふと空を見上げる。

そして深いため息をつく。

 

そいえばなんで私はここにいるのだろうか。

ここで誰を待っているのだろうか。

私と同じように誰かを待っている人は次々といなくなるのに、私はずっとここにいる。

そう、来るはずのない誰かをここで待ち続けているのだ。

 

「会いたいな

ふと小さな声で呟いた。

 

つまらない毎日を過ごしていた私に光を与えてくれたあなた。

笑顔が少なかった私をいつも笑わせてくれたあなた。

早く1日が終わればいいと思っていた私に、終わってほしくないと思わせてくれたあなた。

あなたの存在がどんなに大きかったかを噛み締めながら、なぜか今日もここにいる。

もう会えないのはわかっているのに。

 

あなたとの記憶をこの駅前に投影しながら、この瞬間を彩っていく。

その彩りが続かないことを知っていながら。

 

もう吹っ切らなきゃと思って、改札へと向かった。

でも、またいつの日か、過去に縋ってしまい、この場所に訪れるだろう。

本当は訪れたくないこの場所に。

私が笑顔でこの場所に訪れられる時が来るとしたら、それは私が一歩踏み出した時だ。

その日はいつ来るのだろうか。

いつまでも進もうとしない自分に呆れ笑いしながら、改札を通り抜けた。

 

※この話はフィクションです。

そして今日も世界は進み続ける

邪魔な思考を取り除くために今日も一心不乱に働き続けた。

気を抜くともうダメだ。疲れが一気にやってくる。

それに疲れた時ほど奴のことを思い出す。

 

ダメだ。もう動きたくない

ちょうどよく向かってきたタクシーに左手を上げて、タクシーを拾った。

もう今日はタクシーで帰ろう。

 

華金の今日は、人々が「今週を乗り切ったぞ!!」と言わんばかりに酔っ払い、騒いでいる。

タクシーで繁華街を通り抜ける中、街を彩るネオンと共に、繁華街にいる人達を窓から眺めた。

 

ネオンの光が気が緩み弱くなった心を優しく包み込み、さらに弱くした。

 

あなたがいなくなってから、私の人生もう終わったみたいになったけど、実際終わることなんてない。

死にたくなったとしても死なないし、時間が止まってほしいと思っても時間は止まらない。

 

私が幸せになろうが不幸になろうが、世界にはそんなの関係ないし、知ったこっちゃない。

 

結局マインドの問題でしかないことを世界が私に教えてくれているようだ。

どんなに未来のことを考えても意味がない。

過去は過去。今が未来に変わっていく。

明日が明後日になることはない。結局速度は変わらず、止まることなく進み続ける。

残酷であり、なんだかんだ優しい。それが世界。

 

もう君は過去の人間でしかないんだ。

私は先に進む。だから、今に集中してるんだ。

あなたのことなんか置いていくよ。

でも、ふとした時に弱くなってしまう自分がいる。

今の私は、進むために弱くなる自分を恐れてる。

 

私がそんな状況だったとしても、今日も世界は進み続ける。

なんだかんだ生きていけちゃうんだよね...。

 

この話はフィクションです。

悩み抜いた末に掴んだ幸せ

友人と会った帰り道、一人で考え事をしたかったため、電車を途中で降りて新宿の街中をひたすら歩いていた。

すると携帯が鳴った。菜穂からだ。

電話に出るなりいきなり、「今暇? 飲みにいこ!!

相変わらず、誘いはいきなりでいつも変な時間帯。

2315分。今飲みに行くと確実に帰れない。

次の日、仕事も遅いので終電を諦めて飲みに行くことにした。

 

 

「久しぶり!!

そう言いながら、駆け寄ってきた。

1年ぶりくらいだろうか

そして、いつものように再会のハグ。懐かしい。

 

菜穂とは、友達の中でも出会いが特殊で、同じ一人飲みが好き同士で、御徒町のバーで出会った。

酔っ払ってダル絡みされたのがきっかけで、第一印象は最悪。

でも、なんか面白かったから一緒に飲んだ。

それから会う時は毎月のようにどっかで飲んでた。

だけど、お互い忙しくなり、いつの日からか会わなくなっていった。

 

お店に入るなり、当時の話などで盛り上がった。

無駄に元気なところ、気が強いところ、少し抜けてるところ

出会った頃と何も変わってない。

変わったことと言えば、左手に銀色のリングをつけていることくらい。

しかも一昨日の話らしい。(だから電話してきたのか)

 

喜びよりも驚きの方が大きかった。

なぜなら、出会った当時は荒れに荒れていたから。それゆえの一人飲み。

そして、彼女はバイセクシャルであった。

そして、出会った時には彼女と彼氏がいた。

いわゆる二股だ。

表には出さなかったし、バイセクシャルであることもあまり公言していなかった。

ただ、共通の友人がいない自分には話をしてくれた。

バイセクシャルゆえ、結婚は無理かもしれないと諦めていた彼女を知っていたため、結婚していたことに驚きであった。

 

そして、結婚した理由を話してくれた。

「実は、半年前に付き合ってた彼女と別れたの。それと同タイミングくらいに彼氏からプロポーズされたの。でもすぐは答えを出さなかった。正確には出せなかった。」

 

そこから、その理由やこれまでについて色々語ってくれた。

当時から愚痴や悩みを聞いてた僕には、彼女の気持ちが痛いほどわかった。

バイセクシャルであることを彼氏を始め、家族にも公言していないこと。

LGBTジェンダーレスというのが世の中に浸透するようになっていても、彼女は周りを気にして言えなかったのだ。

言って変な目で見られるのが怖かったから。

それで荒れてたところ、なんか絡みやすくなんか抱えてそうなちょうどいい年下の若造がいたから絡んだのだ。

 

そして、結婚を踏み切ったきっかけを話してくれた。

「最近、山ちゃんと蒼井優が結婚したじゃん? それについての記事とか見て、自分で思うことがあって結婚を決めたの。」

 

予想外とも言える結婚で世間をざわつかせる中、ある投稿がネットで反響を呼んでいた。

それは、蒼井優が結婚前に語っていた価値観について。

 

「『誰を好きか』より『誰といるときの自分が好きか』が重要らしいよ」

byヒャダイン

 

この言葉を見て、共感し、彼女はさらにいろんな記事を見て、考え、ある答えで納得したらしい。

「結婚する相手=一番魅力的な人」ではないということ。

要はタイミングの問題だということ。

 

彼女にとって、一番好きな人は当時付き合っていた彼女。

そして、一番自分好きな自分で入れる相手が彼氏。

付き合っていた彼女は背中を押したい存在。

彼氏は、自分の背中を押してくれる存在。

 

結婚してもいいかなと思った時、付き合っていたのは彼氏。

彼女とは半年前に別れている。

だから、結婚した。

 

なんかすごい納得してしまった

結婚してもいいってなった時、たまたま彼氏と付き合ってた。

彼氏と別れて彼女と付き合っていたら、彼女と同性結婚をしていたかもしれないとのこと。

 

過去付き合った相手を振り返った時に結婚した彼氏より付き合っていた彼女の方が彼女にとって魅力的なのは事実で、一番であるのは今も変わらない。

だが関係性はもう終わっている。そしてその彼女とは連絡は取れない。

 

その幸せに固執してしまうと、一生一人になるのではと考えたらしい。

そして後悔はしてないと言った。

その言葉を言った彼女の目には曇りがなかった。

ちなみにバイセクシャルであることは彼氏には伝えていないらしい。

彼に自分のことで心配事を増やしたくないからだそうだ。そういうところは実に彼女らしかった。

まっすぐ歩んでいる今の彼女の姿に僕は涙した。

すると彼女ももらい泣きし、一緒に泣いて、一緒に泣いてることで笑った。

 

お店を出て、方向が違うため、その場で別れた。

そしていつものようにハグ。そのハグでなぜかまた泣いてしまった。

次はもらい泣きしないでバカにされた。

「あんたも変なことに固執しないで幸せになりなよ」

そう言い残し、彼女は去っていった。

 

SNSで繋がっていない僕らが次出会うのはいつになるのだろう。

どちらからか連絡しないと会うことはないだろう。

また出会うのかもしれないし、もしかしたらもう会うこともないのかもしれない。

それは誰にもわからない。

もう出会うことはなくても、これからの人生の中でかけがえのない友であったことは変わらないだろう。

彼女に出会えたことに感謝しながら、その日はカプセルホテルに泊まり、眠りについた。

 

※この話はフィクションです

欲が渦巻く繁華街とそこにいる人達

僕は、都会での生活は嫌いだ。

正確には嫌いではない、苦手というべきか…

苦手なのに繁華街やネオンの光になぜか惹かれてしまう。

地方で住み続けることも若干違うとかまだだなって感じる自分もいる。

自然に囲まれて暮らすことが好きなはずなのに。

 

都会で働いている人達を見ているのはあまり好きではない。

時に出勤前の満員電車。

なのに繁華街にいる人達を見ているとなぜか心が落ち着く。

僕が好きな自然で癒されるというのと違う癒されかた。

 

だんだんと長い間抱えていたそのモヤモヤが晴れてきた。

 

 

日々の仕事に疲弊してしまう人達。

そんな人達が流れついた欲が渦巻く繁華街。

そこで人々は、人間の三大欲求を満たしていく。

 

居酒屋やレストラン、Barなどで満たす「食欲」

風俗やラブホテルなどといった場所で満たす「性欲」

多額のお金を得たり使ったりすることで満たす「金欲」

 

 

現代の人々は疲弊している人達が多い。

それは近年からなのか、それとも昔からなのか...。

それについてはわからない。

 

繁華街に嫌悪感を抱く人々もいるなか、

なぜ人々は無意識に繁華街に集まるのだろうか。

それは自分自身を満たすためなのではないかと感じた。

 

 

人間とは「欲」を纏う生き物。

いろんな欲を満たすために発展してきたこの世界には、

昔とは比べ物にならないくらいの「欲」を満たすためのカードが存在する。

人々は自制しない限り、目の前にあるカードを手に入れたくなるものだ。

疲弊してしまっている人々は、いけないとわかっていても、そのカードを無意識に手にしてしまうのだ。

 

「欲」に限界はない。

宇宙の先がわからないように、

欲の先なんて見えない。誰も知らない。

 

欲に忠実になること。それは幸せであるかのように感じる。

たとえ一瞬だったとしても幸せになるとは思う。

事実、その瞬間だけでも笑顔になったりするから。

そして、欲に身を委ね過ぎた経験がある人達は知っている。

自我を持たずに欲にすがってしまうと、自分自身を終わらせてしまうことに。

「欲」はある程度の距離感を保つことができれば癒しを与える天使のような存在だ。

だが、近づき過ぎてしまうと「欲」は人間を飲み込む悪魔になるのだ。

 

そんな欲が渦巻く繁華街で僕はシャッターを切り続けた。

そして、繁華街から駅へ向かう人達を見て安堵する。

 

日々の疲れを繁華街で癒し、日常へと戻る。

繁華街は、「欲」と引き換えにエネルギーを補給する場所。

そして「欲」を主としてビジネスを行う人がいる。

 

こんなにも人々が交差し、「欲」が交差する場所は繁華街くらいしかないのではないだろうか。

 

僕はこれからも、繁華街へ定期的に足を運び、人々を観察するだろう。

そして地方にも足を運ぶ。都会と地方を行き来する。

そして、行き来することで僕自身が抱えるモヤモヤを少しずつ晴らしていくのだ。

 

こうしているときも繁華街では新たなストーリーが生まれてる。それが幸せなストーリーかそうでないストーリーかそれは誰にもわからない。

ただ、今日も繁華街は賑わってる。

それだけだ。

古いお店の店主は言った…。

今日訪れた古い洋食屋の店主とのお話。

僕は時間があるとき、昼食を食べ終わると15分くらい散歩する。

その散歩で次に訪れたいお店などを探す。

 

誰かとご飯食べる時は、自分のオススメのお店へ。

一人で食べる時は、基本新規開拓。

穴場に行くときもあれば、人があまり行かなそうなお店の時も。

先日の散歩で探したお店の中で、古くてひっそり構える洋食屋さんが1件あった。

今日はそこに行ってみた。

 

お客さんは自分一人。

古い看板、手書きのメニュー、店内に漂う古臭い匂い。

そして、白髪のおじいちゃん店主。

「いらっしゃい」とニッコリ微笑んだ。

 

 

頼んだメニューはカレー。

出てきたものは、すごく家庭的なカレーライス。

お値段なんと500円。安い!!

 

味は本当に家庭の味。

市販のカレールーを使ったカレー。

本格的なカレーが好きな自分にとっては物足りないものだった。

そりゃ、本格派カレーと味だけ比較したら、物足りないだろう。

でもその日は、物足りなさはなかった。

 

その店主の人の笑顔が素敵だったから。

愛情込めて料理を作ってるんだろうなと感じる。

だって、このご時世、カレールーを使ったカレーなんか出すところはほぼないのではないだろうか。

当時はそれが普通だったとしても、変えないってことは意地だったとしても、何かしらの想いがあるはず。

 

話をしたところ、創業32年らしい。(思ったより古くなかった)

ずっとこの場所から変えずに営業してるとのこと。

たわいもない話をしながら、店主は語った。

32年なんてあっという間ですよ~」

 

その後数分立ち話してからお店を出た。

 

 

その帰り道、「32年なんてあっという間」という言葉を考えていた。

もしかしたら、お店を32年も続ける予定はなかったのかもしれない。

それとも野心があって、規模を大きくすることを目指してたのかもしれない。

真相はわからない。

 

ただ、1日は長く感じたとしても何かに夢中になってれば1日なんてあっと言う間にすぎる。

だから、1日を大切にしろよ

 

そのように言っていたように感じた。

妄想家族 第2話

 「妄想家族の二大幸せストーリー①」に引き続き、第2話。

 ここまで辿りついたかたは優しい人です。

 

▼家族構成などまだご覧になってない方は、こちら▼

【妄想家族 第0話】

 

▼第1話はこちら▼

 【妄想家族 第1話】

 

==================

【妄想家族の二大幸せストーリー②】

「妄想家族の二大幸せストーリー①」は違って、だいぶ子供達が成長します。

今回は、娘・希との幸せなお話。

 

希が26歳になった頃。

のんちゃんは結婚した。そう結婚してしまった。

パパと結婚すると言ってた日がだいぶ懐かしい。

そして今日は、その結婚式。

友人達との集まりは、気を使わないでパーっとやりたいとのことで、今回は親族のみの結婚式である。

 

昔から、子供達からは「ゆうだい」と下の名前で呼ばれ、父親でもありながら友達でもある。そんな感じの仲であった。

のんちゃんのウェディングドレスを見たとき、声が出なかった。

そして、これまでの思い出が蘇り、涙した。

号泣嗚咽。息子・隼斗もなぜか号泣嗚咽。

のんちゃん、奥さん苦笑い。

泣くのはこの時だけだと思っていた...。

 

 

式は順調に進み、終盤。

なんと、のんちゃんから家族へ手紙を書いてきたという。

(な、なんと...)

 

さあ、しっかり聞いてやろうと背筋を伸ばしたものの、意味がなかった。

なぜなら、手紙を読み始めてすぐ、初めて...。

初めて、「お父さん」と呼ばれたからだ。

 

また号泣嗚咽...。

手紙の内容なんて、正直覚えていない。

ただ、嬉しくてここまで育っててよかったと強く感じた。

幸せになれよ。

 

【完】

妄想家族 第1話

妄想家族を受け入れてもらうための一発目。

(受け入れる必要はない)

 

妄想家族のことを普段から話したりするのですが、

最初に必ず、二大幸せストーリーを話します。

第1話は「妄想家族の二大幸せストーリー」から。

 

▼家族構成などまだご覧になってない方は、こちら▼

【妄想家族 第0話】

 

 

==================

【妄想家族の二大幸せストーリー①】

隼斗が5歳の時のお話。

その日、二人で公園に行って遊ぶ予定だった。

でも、その日はあいにくの雨...。

 

父:

「雨降っちゃたね...」

 

隼斗:

「遊びにいけないの?」

 

父:

「そんなことはないよ? 雨さんも一人でかわいそうだから一緒に遊ぼうか!!」

(イェーイ!!)

 

こうして、二人は雨の中公園へ行き、泥の中、水たまりから所構わず、遊びまくった。

そして泥だらけのまま帰宅...。

奥さん、大激怒。

二人して正座して、お説教され、お風呂へ。

 

二人で汚れた服を風呂場で洗っていた。

 

隼斗:

「怒られちゃったね(てへぺろ)」

 

父:

「ねー、でも楽しかったね(てへぺろ)」

 

 

誠に幸せであった...。

【完】

 

 

▼次のお話はこちら▼

【妄想家族 第2話】