「信者」という名の毒薬
「本日はありがとうございました。」
その終わりの言葉と共に大勢からの大きな拍手がなった。
今日も多くの人から握手を求められ、褒めの言葉をもらいながら会場を後にした。
高層マンションの一室。
ドスッとソファーに腰をかけ、いつものように外の景色を眺めた。
都心の中心部に建つこの建物からの景色は絶景だ。
この世界で成功して、この部屋を買ってからというもの、毎日のようにこの景色をみてきた。
だが、いつからだろう。この景色が綺麗だと思わなくなったのは。
いつからだろう。生きていることが辛いと感じ始めたのは。
「すごいですね。」「さすがですね。」「尊敬します。」
これらの言葉を聞くのがもう辛い。苦しい。
そんな言葉はもう聞きたくないと思い、期待外れなことをやってみた。
だが、周りからの声は変わらなかった。
次にみんなの前で人としてありえない非道なことをしてみた。
だが、逆効果で「斬新だ」「新しい」と言った声が挙がり、さらに僕の評価が上がった。
自分の中での評価が下がる中、周りからの評価は上がる一方だ。
自分の中での限界を超え、大好きだった景色を眺めながら、重力に身を任せてその日、落下した。
翌日のニュースは、彼の死について大きく取り上げられた。
多くの人が悲しみに暮れる中、後を追うように、多くの人が死亡したというニュースも流れ、世間を騒がせた。
「あぁ…。僕は一体、何だったんだろう。」
※この話はフィクションです。