愛情中毒
私はかわいい。
かわいいから私の周りにはいつも人がいる。
困った顔をすれば、いつも誰かが助けてくれる。
悲しい顔をすれば、いつも誰かが慰めてくれる。
私が怒れば、いつもみんなが宥めて甘やかしてくれる。
私が楽しみたいと思えば、いつもみんなが楽しませてくれる。
なんて幸せな世界なんでしょう。
みんな頑張っちゃって、バカみたい。
私みたいにみんな素直になっちゃえばいいのに。
私は私のことが好きな人達さえいればいいの。
私のことが好きならば、私に尽くせばいい。
私に尽くしてくれたら、私が幸せを与えてあげる。
私のことを好きになれない人なんて大嫌い。
私のことを見れないなんて本当にありえない。
きっと素直になれないのね。可哀想に。
みんなもっと私のことを見て。
もっと私のことを好きって言って。
もっとかわいいって言って。
もっと私に尽くして。
もう、私って本当に幸せ。
とある倉庫。
たっぷりと蜜が入った壺の中で溺れてる虫がいた。
そう、蜜に溺れていた。
その溺れる姿を見て、ある人は言った。
「滑稽だな…。」
その虫を救うことなく、壺の蓋をそっと閉め、倉庫を後にした。
※この話はフィクションです。